インドネシアの食卓には、トウガラシをベースとした調味料「サンバル」が欠かせません。地域や家庭によって調理法や材料が少しずつ異なるサンバルは、日本で働くインドネシア人実習生にとっても「故郷の味」として大切な存在です。
インドネシアの食卓に欠かせない「サンバル」
「サンバル(sambal)」は、トウガラシ、ニンニク、エシャロット、塩、ヤシ砂糖、うま味調味料などを石臼でペースト状にすり潰した調味料で、インドネシアの食文化には欠かせない存在です。炒め物に加えたり、料理に添えて少しずつ混ぜながら食べたりします。揚げ物や味の濃い料理と一緒に食べると、特に美味しさが引き立ちます。
地域や家庭によっては、使用するトウガラシの種類や、材料を炒めるかどうかといった調理工程が異なるほか、トマト、魚醤、レモン汁などを加えることもあります。このように、サンバルにはそれぞれの「故郷の味」や「家庭の味」が存在します。
故郷の味としての「サンバル」
私は以前、農園たやで働く実習生と一緒に寮生活を送っていました。当番制で夕飯を作っていましたが、私の料理に味見もせずサンバルソースをかけて食べる実習生の姿にモヤモヤしたことを覚えています(笑)。
しかし、インドネシアで生活する中で、サンバルがいかにインドネシアの人々の食文化に根付いているかを理解しました。濃い味付けや辛いものを好むインドネシアの食文化を体感することで、当時の実習生の行動にも納得がいきました。
インドネシアに住み始めて1年半が経ち、今ではインドネシア料理が大好きになりました。それでも、日本の味がふと恋しくなる瞬間が多々あります。醤油は近所のスーパーマーケットで購入できるため必ず買い置きしていますが、味噌は少し遠出しないと手に入りません。また、母のお漬物の味は、インドネシアではいまだに再現できていません。
醤油が私にとっての「故郷の味」であるように、実習生にとってのサンバルソースも忘れられない「故郷の味」なのだと今では理解できます。遠い異国の地にいても故郷を思い出し、心がほっとできる大切な味なのです。