帰国後のビジネスを成功させるために、実習生にビジネスプランを作成してもらう取り組みをしています。(参照「ビジネスプランの10ステップ」)
今回は、その第6ステップについてお伝えします。
第6ステップ=ビジネスのストラクチャー分析
第6ステップでは、計画したビジネスのストラクチャーを詳しく分析します。この「ストラクチャー」とは、ビジネスの「構造、構成、組織、仕組み」を指します。
「ビジネスのストラクチャー」としては多岐にわたる要素が考えられますが、ここではシンプルに6つに絞って考えます。具体的には、内部要因として「知識・経験」「設備」「資金」を、外部要因として「自然環境」「市場」「社会インフラ(ソーシャルキャピタルを含む)」を想定します。
それぞれの項目について、ビジネスにプラス(ポジティブ)になる要素、マイナス(ネガティブ)になる要素を洗い出します。
内部要因は自身の資源であり、改善することでストラクチャーを強化できます。例えば、ビジネスで他社より優位に立つために、ある「知識・経験」が必要と分かれば、その取得に向けて行動することができます。
一方で、外部要因は自身の外部にある要因のため、自力で直接変えることはできません。例えば、福井県の「自然環境」として冬の積雪が想定されますが、雪が降らないように働きかけることはできません。ただし、ビニールハウスの中で作物を栽培する、などの対策は可能です。言い換えれば、外部要因は自力で変えることはできませんが、内部要因を活用することで対策することは可能です。
失敗を外部要因に求めるのは間違い
私がインドネシアで関わってきた農家の多くが、自分のビジネスの失敗の理由を外部要因に求めました。「雨季が長くて作物が病気になった」「政策が悪くて補助金が無い」「乾季に水が不足して収穫できなかった」「購入した機械が盗まれて失敗した」「騙されて悪質な種子や肥料を買わされて失敗した」など、これまで多くの失敗の理由を聞いてきました。天候が不順だったり、社会インフラが脆弱だったり、治安が悪かったりすることは、発展途上国ではよくあることです。
問題は、失敗の理由を外部要因に求めるあまり、行動が諦めや言い訳に向かってしまうことです。現地で支援活動をしていた頃は、私も問題解決よりも、「そうだよなぁ、仕方ないよねぇ」と同情することに気が向いてしまっていました(自戒も込めて)。
気候が良くないのであれば、それを考慮した作物の選定をしたり、モノカルチャーではない営農戦略を考えたりすべきです。
機械が盗まれることが分かっているのであれば、それに対処する方法を模索すべきです。(私がJICA協力隊時代のホストファミリーは、大切なハンドトラクターのエンジンを作業後毎回必ず外して家の中で保管するという対策をとっていました。手間はかかりますが、ここまですれば安全です。)
悪質な種子や肥料を買わされる心配があれば、信頼置ける人からの紹介で入手するだけでなく、自分で品質をチェックするなどの手間を省いてはいけません。
ビジネスのストラクチャーは変化する
ストラクチャーは、ビジネスの規模や社会の変動に伴って絶えず変化します。内部要因が変わらなくても、外部要因は変化し続けます。
急激な変化に押しつぶされてしまわないためには、果敢に対策を打ち出し、必要な投資をして新たなストラクチャーを築いていく覚悟が必要です。
そのためにも、第6ステップで自身のビジネスのストラクチャーを理解し、変化に対応する準備をすることが不可欠です。