「ザーザー雨が降る」「にこにこ笑う」などの「オノマトペ」は易しい日本語だと思っていませんか?実は外国人にとって日本のオノマトペは難しくて伝わりづらい言葉のようです。
実習生と会話する時には、他の言葉に言い換えたり、実際の物や動作を見てもらったりした方がよく伝わります。
この記事では「オノマトペ」について農園の事例を交えてお伝えしたいと思います。
オノマトペとは?
オノマトペとは、音や状態、動きなどを表現した語です。「ザーザー」などの擬音語や「にこにこ」などの擬態語があり、日本語は世界的に見ても特にオノマトペが多い言語だといわれています。
例えば「ブーブー(自動車)がたくさんいるね。」などのように幼児に使うことも多く、私たちには感覚的にイメージしやすいため、易しい日本語なのだと思われるかもしれません。しかし、日本語を勉強し始めたばかりの外国人には伝わらないことが多いようです。
オノマトペが伝わらない理由
日本人同士では伝わりやすいオノマトペが、実習生に伝わらない理由はなんでしょうか?
私の考えでは、原因は3つあります。
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①日本語とインドネシア語ではオノマトペが異なる
(例)はさみで紙を切る音
日本語「チョキチョキ」
インドネシア語「kres…kres…(クルスクルス)」
②日本語のオノマトペは種類が多く分類も細かい
(例)走り方、歩き方だけでも「すたすた」「せかせか」「つかつか」「のしのし」「よちよち」「ふらふら」「よろよろ」「とぼとぼ」「てくてく」…とたくさんのオノマトペがあります。
③同じオノマトペで異なる状態を表すことがある
(例)「ゴロゴロ」にもいろんな使い方があります。
「雷がゴロゴロ鳴る」「部屋でゴロゴロする」「お腹がゴロゴロする」「目がゴロゴロする」
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では、最後にオノマトペに関する農園たやでの事例を二つご紹介します。
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事例①「さらさら」?「ふわふわ」?
種まき前に畑の土に鎮圧機をかける作業があります、実習生に、
「畑の土が乾燥して柔らかいところがあるので、そこは重点的に鎮圧してください」
と指示しようとしたのですが、言葉が難しくて伝わらないと思ったので、
「土が『さらさら』して『ふわふわ」しているところはたくさん機械をやってください」
と言い換えて伝えてみました。「たくさん機械をやる」という不自然な日本語は理解してもらえましたが、「さらさら」「ふわふわ」は全くイメージが伝わらなかったようでした。
私はオノマトペは伝わりやすいのだと直感的に思い込んでいましたが、外国人には伝わりにくいのだと実感しました。オノマトペを使うよりも、足で踏み込んで長靴が埋まってしまう様子を見せたり、乾いて柔らかくなっている土を触らせたりして、実際に体感してもらうことがより効果的に伝わるのだと学びました。 -
事例②芋虫が可愛いね?
野菜の収穫中、実習生に「芋虫は害虫だから、見つけたらかわいそうだけど殺さなくてはいけないよ」と教えていました。実習生に見せようと芋虫を摘み上げると、芋虫は必死に逃れようと動き回ります。その動きを私が「芋虫がウニュウニュしてるね」と言うと、実習生がなぜか急に笑い始めました。
なぜ笑っているのか訊ねると、インドネシア語で「ウニュウニュ」は可愛いという意味があるとこのとでした。私が芋虫をみんなに見せつけてウニュウニュ(可愛い)と言っているので思わず笑い出したそうです。
この出来事をきっかけに、実習生は日本人が話しているオノマトペに似た発音のインドネシア語を教えてくれるようになりました。例えば「きらきら(kira-kira)」にはインドネシア語で“だいたい”の意味があり、「くらくら(kura-kura)」には”亀”の意味があるそうです。一方で、日本のオノマトペに対して実習生自身も興味を持ち始め、意味を聞いてくるようになり、思いがけず新たなコミュニケーションが生まるきっかけとなりました。
オノマトペの使用について学んだこと、伝えたいこと
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「オノマトペは易しい日本語である」という直感に反し、外国人には伝わりづらい。
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オノマトペが伝わらなかった時には実物を見せながらイメージを説明するべきである。
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オノマトペを通して、同じ発音のインドネシア語を教え合うなど、新たな話題が生まれた。
やさしい日本語とは、外国人にも分かるように普段使う日本語を簡単にする「易しい」
と、会話をする相手に合わせる「優しい」気持ちの二つの意味が込められています。
文化庁と出入国在留管理庁が作成した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」
というものがありますので、そちらも参考にして頂けたらと思います。