イスラム教徒には、もっとも大切にしている時期があります。それは断食月です。断食月については、すでに別の記事で触れているのでそちらを参照ください(断食月との付き合い方)。断食月が明けると、断食明け大祭(レバラン:注)となります。インドネシアでは、この時期に1週間ほど休みになり、故郷に帰省したりします。日本でいえば、正月やお盆のような感覚で、とても大切な休日になります。(注:インドネシアでは「レバラン」もしくは「イドゥルフィトリ」といいます。アラビア語ではイード・アル・フィトルといいます。)
さて、そのレバラン休暇について、「あげないといけないでしょうか?」とか、「農園たやさんではどうしていますか?」とインドネシア実習生を受け入れている農家さんから相談されることがあります。イスラム教徒にとってはとても大切な休暇なので、もし休暇をあげても業務に支障がないのであれば、あげたほうがいいのだろうなぁと思います。ただ、弊社の場合、インドネシア人材が主力で野菜栽培をしていますので、全員にレバラン休暇を与えるのは、実質休園にしないと無理になります。農園の休園カレンダーを作成するときに、事前にレバラン休暇を盛り込むことは可能かもしれません。ただ少し問題があります。
まずレバランの時期ですが、イスラム教は太陰暦を使っているので、太陽暦にくらべて1年で11日ずつずれていきます。そのため、毎年レバランは同じ日にちではありません。休業日が毎年ずれるので、得意先に覚えてもらうのは少し難しいです。またそのレバランも月の観測を行い、月の見え方で宗教の権威の方々が話し合って決めるため、国によって違う場合もあります。断食の開始や終了時期が当初より1日ずれたりすることが、たまにあります。これも事前に休業を決めるのが難しくなります。
次に、インドネシアの実習生は、必ずしもイスラム教の方ばかりではないということです。イスラム教のレバランを会社の公休とする場合、同じようにほかの宗教にも気を使う必要が出てきます。弊社ではキリスト教のインドネシア人材も在職しているので、レバランを休みにするのであれば、当然クリスマスも休みにする必要があります。しかし弊社はそのころ、年末の野菜出荷に向けて一年でもっとも忙しい時期で、とても休園にはできません。
レバランに合わせて、イスラム教の実習生が有給休暇を申請してくるかもしれません。これも農閑期であれば可能ですが、弊社のように社員の半分であるイスラム教のインドネシア人材が有給を取るとなると、当然取引先にもご理解いただかないといけなくなり、さまざまな調整が必要になってきます。もちろん、休暇を出さないとは言えないので、みんなで相談して解決策を探すことになります(休む人数を調整したり、時期をずらしてもらったり、など)。
そのため、弊社では雇い入れ時の面接で、会社の休日と休暇の取り方については、詳しく説明をしています。とくに会社の休日では、レバランといえども会社の公休ではないと理解してもらっています。レバラン休暇が当たり前になっている実習生に、そうではない社会で働くことを理解してもらうことが大事です。もちろん、レバランなどの宗教の休みをあげられる場合は、積極的にあげてください。インドネシアの実習生たちは、宗教をとても大切にしているので、その心づかいにとても喜んでくれると思います。