来日間もない時期の衣服事情について、実習生のひとりにインタビューをしました。寒暖差の激しい日本の気候に対応できる衣服を持っていなかったとき、サポートを受けて助かったエピソードを教えてくれました。体感的な暑さ、寒さはどんなに情報があっても伝わりづらく、来日してすぐの実習生の作業着に関しては季節に合わせたサポートが必要だと感じました。
冬に来日した実習生のシティさん
シティさんは寒さの厳しい2月に来日しました。農園たやのある福井市は2月の平均気温が3°Cで、年によっては大規模に雪かきを要するほど降雪します。来日当時時彼女がインドネシアから持ってきた防寒着は普段着用のジャンパー1枚でした。防寒着は限られた量の持ち込み荷物に詰め込むにはかさばりすぎるので1枚にしたそうです。また、インドネシアではダウンジャケットのような厳しい寒さに対応した服は手に入りづらいとのことでした。
体感的な暑さ、寒さは伝わりづらい
実習生によっては、日本で生活するのに十分な防寒着を準備して来日したつもりでも、足りなかったという人も多いです。気温や気候についての情報は来日前にも知ることができますが、体感したことのない寒さを想定することにはどうしても限界があります。シティさんは、「福井県では雪が降るほど寒さが厳しいということは聞いていましたが、これほど寒いとは思っていなかったです。」と言っていました。
来日したインドネシア人の中には、季節による寒さを体感するのがはじめてで、「ここは標高が高いの?」と勘違いをしてしまったり、気温によって衣服の表面が冷たいことを「服が濡れてしまった」と思ってしまったりすることもあります。未経験の感覚を理解することの難しさがうかがえます。
農園たやでの冬のサポート
来日してすぐに、手袋や長靴、厚手の靴下など農作業に必要なものは日本人スタッフと一緒に買い出しに行きました。作業中に着るダウンジャケットや保温素材のインナーウェアなどは日本人のスタッフにお古を譲ってもらったものもあります。初月のお給料をもらう前だったので役に立ったようです。とはいえ、お古としてもらった防寒着の中には、色や形が好みではないものもあったようです。
来日してすぐはお給料をもらう前ですぐには購入できないことや、その防寒着をくれた人が喜んでくれるために着ていたとも言っていました。2年目からは自分で防寒着を購入し、もらったダウンジャケットは来日したての後輩の女性実習生に譲りました。
農園たやの作業場ではよく、靴下やインナーウェアについてどこのお店のものがオススメであるとか、この素材はあたたかいといった話題で盛り上がっており、実習生もその会話を参考にして防寒グッズを買うことがあるそうです。
防寒着以外には、使い捨てカイロの使い方を教わったことや、あかぎれ、肌の乾燥にどんな保湿クリームがおすすめなのかといった情報が有用でした。実習生の中には、野外作業でしもやけになってしまった時に、かゆみの原因が「しもやけ」であると知らずに対処できなかった人がいました。寒さによって生じる様々な問題についても予防法と対処法を教えてあげる必要があります。
夏のサポート
夏の暑さについても、想像以上に暑くて驚いたという声がよく聞かれるため、衣服についてサポートを要する場面があります。速乾性生地の衣服や日焼け止めクリームの紹介が役立つと思われます。
また、イスラム教の女性の多くが着用しているヒジャブについて、日本では通気性に優れたスポーツ用ヒジャブが手に入りづらいといった問題も生じました。結果として農園たやの実習生はインドネシアの家族に送ってもらって着用していました。
今回の学び
-
来日してすぐの実習生の作業着に対しては、季節に合わせたサポートが必要。
-
暑さ、寒さが本格化する前に一緒に買いに行ったり、おすすめのお店や素材についてアドバイスをしたりするとよい。
-
体感的な暑さ、寒さはどんなに情報があっても伝わりづらいため来日後のサポートが必要。