外国人材が異国で活躍するために必要なこと
私はJICA海外協力隊としてインドネシアに派遣された経験があります。現地で農業指導を担当していましたが、日本では当たり前にできていたことが、インドネシアでは一人では何もできなかったことを強く覚えています。農薬の名前や肥料の配合は日本とは全く異なり、農業資材を販売している店の場所すらわかりませんでした。また、現地での栽培に詳しい農家や農業普及員の情報も少なく、赴任当初は現地の方々に教えてもらうことばかりでした。「自分は何のためにここに来たのだろう」と悩むこともありました。
インドネシアでは、過去の事故の影響で、JICA隊員がバイクに乗ることが禁止されており、これが農村で活動する私にとって大きな障害となりました。資材の購入や村での会議も、現地の誰かの助けがないと実現できません。言葉、知識、移動力、人間関係が十分でない状況での活動は本当に大変でした。日本にいた時の自分ならもっとできるはずなのに、と何度も悩んだものです。
この状況は、外国人材が日本で十分に活躍できない構図と実は非常によく似ています。
私を助けてくれたのは、現地の農家や農業普及員の方々でした。彼らはバイクや車を運転して私の代わりに物品を購入し、会議にも連れて行ってくれました。また、現地の農業普及に欠かせない農村リーダーを紹介してもらい、非常に助けられました。現地の人たちがまるでスーパーマンのように感じられ、一体どっちが協力隊なのだろうかと思うほどでした。
しかし、インドネシアではスーパーマンであった彼らが、日本に外国人材として働きに来たときには、思うように活躍できない場面を目の当たりにすることがあります。これは彼らの能力の問題ではなく、私がインドネシアで直面した壁と同じものにぶつかっているからです。言葉、知識、移動力、人間関係など、環境の違いによる壁が、彼らの能力の発揮を妨げています。この壁を取り除くことで、外国人材も母国にいる時と同じように能力を発揮し、活躍できるはずです。
「運転免許を取得しよう!」の一連の記事では、この中でも特に「移動力」に焦点を当ててお話ししたいと思います。
外国人材が働く現場=日本の田舎は車社会
外国人材が働く農業の現場は、基本的に田舎にあります。日本の田舎は車社会で、公共交通機関が不足していて、外国人材が買い物や遊びに行く手段に困るという話をよく聞きます。スーパーやコンビニが遠く、買い物難民になってしまうケースも珍しくありません。知り合いの職場では月に一度、車を出して買い物をサポートしていますが、自由に買い物を楽しむという環境ではないようです。職場と自宅を行き来するだけで、休日があっても遊びに行くのが難しい人も多いのです。せっかく日本に来たのに、まったく日本を体験できずに帰国するのは非常にもったいないことだと思います。もし、彼らがインドネシアで当たり前にしていたように、日本でもバイクや車が運転できれば、もっと自由に行動でき、充実した生活を送れるでしょう。
移動力の向上で日本語レベルUP
多くの外国人材が日本語レベルの向上を希望しているものの、移動力の不足が大きな障害となっています。福井の国際交流会館では、ボランティアによる日本語講座が提供されていますが、私たちの農園からのアクセスの悪さが通学の大きなハードルになっています。職場でのコミュニケーションを円滑にし、任せられる仕事の幅を広げるためにも、日本語能力の向上は不可欠です。私の知り合いからは「教室へ送り迎えは手間がかかる」「会社まで日本語教師を招きたいが、費用がかさみ、対応可能な先生が少ない」といった声も聞こえます。しかし、移動力を向上することで、この問題は解決できるかもしれません。
移動力の向上で仕事の効率UP
外国人材の移動力の向上は、生活面だけでなく、仕事でも大きな効果を発揮します。特に農業の現場では、農産物の運搬や畑への移動が頻繁に必要であり、バイクや車の運転ができるようになれば、彼らは大きな戦力となるでしょう。
運転免許を取得しよう!
農園たやでは、特定技能外国人材が母国で取得した運転免許を日本の免許に切り替えるサポートをしています。
日本での運転が可能になることで、農産物の運搬や畑への移動、農産物の配送、一人での管理作業などを任せられるようになり、作業の幅が広がり、効率が大幅に向上しました。
さらに、生活面でも大きな変化が見られます。日本語学校に積極的に通い、日本語の上達も目覚ましく、休日は県内の観光地を楽しむなど、充実した生活を送っています。
こうした個々の充実がやる気となり、会社の業績もどんどん良くなっています。
皆さんも、現在関わっている外国人材の移動力の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか?
運転免許の切り替えに必要な手続きや、インドネシアでの運転事情などについて今後の「運転免許を取得しよう!」の一連の記事で詳しく解説しますので、どうぞお楽しみに。